ドイツが誇る科学頭脳
ここでは、新アイデアが世界を動かす―第一線で活躍する科学者・ノーベル賞受賞者をご紹介します。
ほぼ20年ぶりにドイツ人がノーベル化学賞を受賞する。ベルリンの化学者ゲルハルト・エルトゥル氏は、今年名誉あるノーベル賞を受賞する2人目のドイツ人科学者となる。
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ドイツの物理学者ペーター・グリュンベルク氏に今年のノーベル物理学賞が授与される。ユーリッヒ固体物理研究所に所属するグリュンベルク教授は、68歳。フランス人研究者アルベール・フェ-ル教授と共に名誉ある科学賞を受賞した。
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ハイデルベルクにあるドイツ癌研究センター(DKFZ)のハラルド・ツア・ハウゼン氏が、今年のノーベル医学賞を受賞することになりました。ストックホル ムにあるスウェーデン・カロリンスカ研究所によると、この72歳の研究者は、子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルスを発見したことに対し、賞を授与 されました。
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クリスチアーネ・ニュスライン=フォルハルト ― ノーベル賞受賞者
チュービンゲンのマックス・プランク発生生物学研究所のクリスチアーネ・ニュスライン=フォルハルトは、初期杯発生の遺伝的制御に関する発見により1995年、ドイツ人女性として初めてノーベル生理学・医学賞を受賞した。
MPIはノーベル賞受賞者を多数輩出する機関として知られ、48年の設立以来、このふたりを含め16人もの受賞者を出している。
テオドール・W・ヘルシュ ― ノーベル物理学賞受賞者
スタンフォード大学に研究の場を移した若きポストドクター時代から、テオドール・W・ヘルシュは一見単純なトリックで、同僚たちを驚嘆させることに長けていた。複雑木極まりない問いに対してシンプルな答えをみつける才能は、マックスプランク量子光学研究所の所長、そしてミュンヘンのルートヴィヒ=マキシミリアン大学(LMU)教授の地位にある彼を、現在にいたるまで特徴づけている。ヘンシュはレーザーによる精密分光技術開発の貢献によって、2005年にノーベル物理学賞を受賞した。物理への熱狂の理由を、彼は次のような言葉で説明している。「個々の人間のやることは、なんら重要性を持ち得ない。だが私のような人間でさえ他の人々が先に進むために役立つ何かを発見し得るということは、間違いなくひとつの高揚感をもたらす経験である。」ヘンシュ教授はLMUでも、そうした高揚を学生たちに伝えたいと考えている。
カールハインツ・ブランデンブルク ― MP3の生みの親
聴きたい曲をインターネットからダウンロードする、高音質の衛星デジタルラジオ放送を楽しむ…
こうしたMP3フォーマットの新世界は、カールハインツ・ブランデンブルク教授がエアランゲンのフランホーファー集積回路研究所で成し遂げた先駆的業績がなければ、とうてい不可能だっただろう。教授は早くも1987年に、世界に先駆けて音声データ圧縮技術の開発と取り組んでいた。
2004年にドイツ東部イルメナウに新設されたフランホーファー・デジタルメディア技術研究所所長に就任した後も、むろんブランデンブルク教授は研究に専念してきた。中心テーマは依然として、プロのオーディオ専門家向けの市場やエンターテインメント部門で利用される新しいメディア技術の開発。新しいところでは、医療技術用の特殊なオーディオアプリケーションの開発にも力を入れている。
ヴォルフ・シンガー ― 脳科学者
自由意志というものは、果たして存在するのだろうか。この極めてスリリングな問いが、マックス・プランク脳科学研究所所長ヴォルフ・シンガーの主要な研究テーマである。世界的に著名な神経生理学者であるジンガーによれば、人間のすべての行動はニューロン(神経細胞)の結合様式によって決定される。ジンガーの理論は多くの人々から挑発と受け止められ、新聞の学芸欄などで盛んに論じられることとなった。「私たちの意識や行動のすべての起源は脳に求めなければならない」と、ジンガーは言う。
奥田純 ― 化学者
この1月、奥田教授はドレスデン工科大学で「次世代重合触媒ポストメタロセン」について講演を行った。素人にはわかりにくい専門的なテーマである。教授はポリマー研究の権威であり、ドイツはこの研究分野―ポリ袋の材料など、新しいプラスチック素材に関する学問―の世界チャンピオンだ。日本生まれの奥田教授は1966年、9歳のときに両親とともに来独した。父親が研究者として勤務していたアーヘンのライン=ヴェストファーレン工科大学(RWTH)で化学を専攻。その後、ケンブリッジ、ミュンヘン、オルバニー(ニューヨーク州)、マールブルク、マインツの各大学を経て、03年からは15人の研究スタッフを擁するRWTH無機化学研究所の所長の任にある。「われわれの技術と文明は自然と人間を対立的にではなく、一体として捉える新たな発展段階の始まりにある(そうあって欲しい)」が、教授の学問的信条である。
モジブ・ラティフ ― 気象学者
大津波や旱魃などの大きな自然災害が起こると、決まってメディアから引っ張りだこになる専門家のひとりがモジブ・ラティフ。大学で気象学を教え、キールにあるライプニッツ海洋科学研究所で研究に携わるこの気象学者ほど、極端な天候異変についてわかりやすく解説できるひとは少ない。パキスタン出身で長年ハンブルクに住むラティフ教授は、現在、全地球を対象とした数値予報モデルの開発に全力を注ぐ。このモデルを用いれば、例えばエルニーニョのような現象の短期的変動予測の精度
を大幅に向上させることができる。
ヨルン・ラウターユング ― 物理学者
地球上のどこかで大地震や噴火が起こると、ドイツのマスメディアには決まってGFZという名称が登場する。GFZ、つまりポツダム地球科学センターの300人の研究者の中には、起こった災害を適切に解説してくれる専門家が必ずいるからだ。
その学術理事会理事長で物理学者のヨルン・ラウターユングも、むろんそうしたひとりである。ラウターユングは現在、ドイツ連邦政府の委託を受けてインド洋における早期津波警報システム構築プロジェクトの調整役を務めている。「津波が発生した場合、人命を救えるのは効率の高い早期警報システムだけ」と、この地球科学の専門家は言う。
ハーゲン・フォン・ブリーゼン ― エイズ研究者
数年前からエイズウィルスの研究に取り組む。ドイツで初めてエイズウィルスの分離に成功した研究チームのメンバーで、国連エイズ合同計画の責任者も務めた。現在、フォン・ブリーゼンを中心とする研究チームは、サンクト・インクベルトにあるフラウンホーファー・バイオメディカル研究所(IBMT)で、エイズ・ワクチン開発に取り組む。IBMT研究チームは目下、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が提供した750万ドルの資金を使って、これまで知られているエイズウィルスやワクチン候補に関する情報を網羅したデータバンクを作成中。このエイズワクチン開発研究には、ゲイツ財団がエイズ撲滅を目指して支援する世界各地の研究者165人が協力することになっている。
マルクス・ビューヒラー ― 医師
ハイデルベルク大学病院外科長で、一般・内科・外傷救急外科を専門とする51歳のビューヒラーのキーワードは「インテリジェント手術」。同名の博士課程合同研究プログラムで、教授はえりすぐりの若手研究者チームと共に、「未来の手術室」のための新しいメソッド開発に取り組んでいる。コンピュータやロボティックス、インタラクティブ画像診断など、いま外科医の仕事環境は激しい革新の波にさらされている。最新医療技術は医師たちに大いなる可能性を開くとともに、幾多の新しい要求も突きつけてくる。そうしたなかで、あるべき将来の方向を示すために、ルプレヒト=カールス大学(通称ハイデルベルク大学)とカールスルーへ工科大学、ハイデルベルクのドイツがん研究センターは共同で進めるのが上記プログラムである。特筆すべきは、ビューヒラー教授のもとで活動しているのは医学の専門家ばかりでなく、工学・自然科学の研究者とも協力しながら、新しいコンピュータ支援計測・手術法の開発が進められていることである。